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感情を揺さぶり心が動く体験をすることが、どんな人間にとってもなにより大事だと考えています。「子供が主役の国」キッザニアでは、90種類以上の職業を疑似体験できますが、子供にとっては全てが初めてのこと。仕事に取り組んでいる子たちは楽しくて目を輝かせています。もちろんワクワクすることがほとんどとはいえ、ときにはドキドキしたりビクビクしたりすることもあるでしょう。 考えてみれば、大人だって仕事や人間関係で、ドキドキ、ビクビクはありますよね?でも、それは決して悪いことだとは思いません。むしろ、とても重要なこと。いろいろなとらえ方があると思いますが、それだけ緊張感を持って生きているという証明でもあるのですから。 そんな環境に自分が身を置いていられるのも、幸せなことですよね。もちろん張りつめてばかりでは疲れてしまいますが、ただダラダラと生きていることは、時間を無駄にしているのと同じです。 僕自身、そういう状況に身を置いて進むのが生きがいにもなっています。そして、何かを乗り越えたり達成したときに得られる充実感が、何事にも代え難い財産になる。だから、最初はビクビク、ドキドキでもいいんです。 イキイキと行動したり、ワクワクと心躍る前にはそういう気持ちも必要だと思う。それがあるから、その先のハッピーにもたどりつけるんですね。 実際に、キッザニアの中でもそうした場面がありますよ。まず、子供は初めて触れ合う「仕事」という体験に、ドキドキしています。どうすればいいのかな、本当にできるかな、と不安な気持ちもあって当然です。仕事によってはビクビクすることもあるかもしれない。でもそれは子供だけじゃない。そのとき、親も一緒にドキドキしているんです。 うちの子、他の子と一緒にちゃんとできるかな、と。各パビリオンの作業場には子供しか入れませんから、親は外で見守るだけ。子供は、自分で考えて行動するしかないんですね。でも、何回かやっているうちに最初の不安は消えてしまって次第に楽しくなり、イキイキワクワクとした気持ちに変わっていきますよ。 子供が自分で学んでいくことが大事で、順番待ちのときから勉強は始まっています。隣には知らない子が並んでいるわけですから。そして、実際に体験するときも他の子と一緒だったりする。最初は違和感がありますが、そのうち友達になれます。そういう場って、考えてみると今の世の中でほとんどないんですよ。学校、塾、家庭が点で結ばれていて、なかなか子供同士のつながりが生まれない。 好奇心旺盛でやんちゃ盛りの子供たちが大勢来るわけですから、キッザニアではいろいろなことがあります。ときにはトラブルが起こることもある。でも、子供にはいい勉強、ということを親も分かっているんです。安全安心をモットーにしていますが、防ぎようがない事態もある。本当の社会に出るための予行演習であり、準備なんです。だからこそリアル感にこだわっているし、心が動くような環境づくりをしています。 子供たちは、目の前のことをやってみたいから自発的に楽しんでいます。そして、次にやって来たときも、前回と同じ仕事を選ぶんです。親にしてみれば、違うところに行けばいいのに、と思うのですが、子供は違います。 それは、前回と同じ仕事をもっと上手くやろうとしているんですね。自分でハードルを上げて、高く設定した壁を登ろうとする。他の誰かに言われなくても、自分からそういう気持ちになる。この心構えができたら、その先の人生がかなり変わってくると思いませんか。 各業界から、それぞれスポンサー企業のパビリオンが入っていますが、やはり人気があるのは食べ物系です。ハンバーガーショップではハンバーガーの作り方が書いてありますが、読むのと実際作るのとでは違いがある。ハンバーガーのバンズってこんなに柔らかいんだ、とか、火が熱いことを、身をもって覚えるんです。そんな体験を、より多く心に内蔵することが大切です。 そんなことも含めて、僕は全部子供から学んでいると言ってもいいかもしません。キッザニアを始めてから気付いたことも多い。それまで、長年外食産業に携わってきて感じたのは、人は大人になってからでは、なかなか変われないということ。 社員研修などで新卒の若者たちを多く教育してきましたが、やはり20年以上染みついてきた振る舞いや考え方は簡単には変わりません。やはり、「三つ子の魂百まで」なんですね。風景、味、匂い、言葉……誰しも、小さいときの記憶は強く残るものです。それも、自分で感じたり見聞きしたことを自然と吸収しているんですね。 無意識の中で、その人の人格形成に影響を与えているんだと思います。押しつけで物事を教えては、そうはいきません。親は、上から教えることで子供が学んでいくと錯覚しがちですが、本当は違うんですね。自分が教えてやらないとダメなんだ、という上から目線は、捨てた方が子供にとってもいいのです。 「なんで?」、「どうして?」という質問は好奇心の塊。それがなくなるのは、成長が止まるのと同じことです。親はそれをせき止めてはいけないし、僕はそんな可能性を広げるチャンスをどんどん提供していきたいですね。
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