王妃マリーアントワネットが死刑を宣告された時、
ショックのあまり、一夜で白髪になったという有名な逸話があります。
また、江戸川乱歩の小説『白髪鬼』にも、一夜にして白髪になった男が登場します。
こうした話は、現実にありえるのでしょうか?
結論から言うと、黒髪が一夜で白髪になるのは、科学的にはありない話。
しかし、黒髪が白っ茶けた毛色になることはあるでしょう。
ただし、それも髪の毛が乾燥している時だけです。
水で濡らせば、元どおりの黒い色に戻ります。
それにしても、なぜ、このようなことが起きるのでしょう?そのナゾを解くカギは、髪の毛の構造にあります。
髪の毛は、「海苔巻き」に似た構造をしています。
外側の「海苔」にあたる部分にあるのが、キューティクル。
「ご飯」にあたる部分は、毛皮質(コルテックス)。
そして、「芯」に当たる部分には髄(メデュラ)があり、この髄(メデュラ)は気泡を含んでいます。
そもそも髪の毛は黒く見えるのは、毛皮質(コルテックス)に含まれている黒いメラニン色素が透明なキューティクルの上から透けて見えるため。でも、髪が乾いている時には、光が当たると、黒さが薄れて見えるはずです。
その理由は、髄(メデュラ)に到達した光が気泡に乱反射するためです。
この時、髄の気泡が多いほど、光の乱反射も強くなり、髪はいっそう白っぽく見えます。だから、一夜にして髪が白っ茶けた色になるのは、過度のストレスにより髄の気泡が多くなったせいだと考えられるのです。
一夜にしてメラニン色素が破壊されることは、理論的にはありえません。
ちなみに、ストレスで髪の髄の気泡が増えるナゾは、まだ解明されていません。
毛細血管が走っている場所には必ず神経層があるのですが、この神経層がストレスでピリピリ痙攣することにより、髪の髄が拡張し、気泡が入り込むのではないか…という説もあります。
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